医療法人イプシロン

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2021.08.31 更新コラム

【コラム】認知行動療法の効果について

【コラム】認知行動療法の効果について

医療法人イプシロンでは、精神科・心療内科の外来診療とともに、心理職によるカウンセリングも実施しています。カウンセリングと一口に言っても、様々な流派・技法がありますが、今回は当院でも実施している認知行動療法について触れたいと思います。

 

医学領域では、1990年代からEBM(Evidence-based Medicine)の概念が知られるようになり、科学的に実証された方法で医療(治療)を行うことが重視されています。これはカウンセリング(心理療法)でも例外ではなく、治療者の専門知識と治療を受ける患者さんの価値観などを組み合わせ、最適な治療アプローチを決定するためのものとして、近年では「実証的に支持された治療法(Research-Supported Psychological Treatments: RSPT)」と呼ばれて重視されています。

 

こうしたエビデンスに基づく心理療法のガイドラインとしては、RSPTをまとめたAPA(米国心理学会)第12部会(臨床心理部会)や、イギリスの「NICE Clinical Guideline」が有名です。こうしたガイドラインにおいて、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)は、気分障害(うつ病、躁うつ病)や不安障害(社交不安症や強迫性障害など)、摂食障害、統合失調症など、様々な疾患に対する有効な治療選択肢に位置づけられています。抗うつ薬による治療とCBTでは治療効果などに大きな差はなく、軽症から中等症のうつに対しては、抗うつ薬の使用に先行してCBTを実施することが推奨されています。

 

CBTは、主に考え(認知)と行動を扱いながら、患者さんがご自身で変化していく治療法です。カウンセリングの中で治療者と話し合い、困りごとを整理した上で、それを変えていく(解決していく)ための方法を考えて実践していきます。カウンセリングでどれだけ「いいな!」と思っても、実際に生活の中で実行できなければ意味がありません。そのため、CBTではホームワークを設定して、日常生活の中で試してみることを重視しているのです。こうしたホームワークの負担や、短期的にすぐに効果が出るわけではないという点はCBTのデメリットかもしれません。しかし、薬物療法のような副作用はなく、個人の考え方や行動パターンにアプローチするため再発率が低いといった点は、CBTのメリットと思います。

 

もちろんCBT以外の心理療法は効果が低いということではありません。実際、心理療法の流派・治療技法の治療効果に大きな優劣はないことも示されています。大切なことは、患者さん1人1人が抱える悩みや困りごとに対して、最適な治療技法を選んで実践し、その結果、患者さんが困っている今現在よりも楽に過ごせるようになることです。今回はその技法の1つとして、当院でも行っているCBTについて取り上げました。

 

水戸メンタルクリニック 臨床心理士/公認心理師 中澤


(参考論文など)

米国心理学会第12部会(APA Division 12) https://div12.org/treatments/
国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence: NICE)
https://www.nice.org.uk/guidance
齋藤清二.(2018) エビデンス・ベイストとは何か-ナラティブ・アプローチの観点から. 第44回日本認知・行動療法学会大会プログラム, 71-72.
齋尾武郎. (2013) 統合的心理療法とドードー鳥の裁定:心理療法に優劣はない. Clinical Evaluation, 41, 407-420.
高橋史・岸田広平・栗林千聡・武部匡也・松原耕平. (2020). エビデンスに基づく心理療法とその基盤制度―日本における医療・教育・福祉・司法・産業の臨床五領域について―. 信州大学教育学部研究論集, 14, 331-348.

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