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2023.11.21 更新レポート

日本認知・行動療法学会のワークショップに参加

日本認知・行動療法学会のワークショップに参加

認知・行動療法学会で開催されたワークショップに参加しました。いずれも学びが多く大変勉強になったと感じております。簡単にはなりますが、以下に内容を紹介します。

■統一プロトコル UP-C

統一プロトコル(Unified Protocol: UP)とは、ボストン大学不安関連センターのBaelow博士らが、成人の鬱や不安に幅広く適用可能な診断横断的な認知行動療法として開発したものです。UPは、うつ病や不安症を「感情症」(感情調整不全の結果、様々な症状が生じる)として捉えて、それを治療の対象としています。そのため、感情の問題が生じていればどの疾患かはっきりしなくても治療でき、また、2つ以上の疾患が併発していても治療できるという利点があります。

UPの対象としては、不安障害、強迫性障害、うつ病、双極性障害、心的外傷後ストレス障害、アルコール使用症、摂食障害、不眠症、自殺念慮と自傷行為、BPD、慢性疼痛などの様々な方が対象となっています。

今回は児童版UP(UP-C)について学びました。
実施形式は集団形式(全15回、各90分)※個別でも可、対象年齢は6〜12歳となっています。
内容としては、以下の通りになっていました。
(1)困りごとの同定と目標の同定
(2)感情体験のモニタリング
考え・身体感覚・行動の3要素に分ける(感情のきっかけと3要素)。
感情行動:感情に従って取る行動(回避行動を含む)について学ぶ。
(3)認知再評価と問題解決
自分に出てきやすい思考パターンを把握し、考えのモンスター(思考の落とし穴)について学ぶ。
(4)感情暴露(エクスポージャー)
マインドフルネス(今ここへの注目 気づき、言葉にし、体験する)について学ぶ。
感情暴露の仕組み(馴化)を学ぶ。
まずはグループで感情暴露をすることから始めて、個別でも感情暴露をしていく。

今回学んだUP-Cは対象が児童となっていますが、成人用のUPと同じ要素であったため、今後の業務で活かせる内容を学ぶことができたと感じています。UPの中で行われれている内容は一般的な認知行動療法の内容と重複する部分が多く、それが構造化されていることで初学者にも実施しやすいプログラムでもあると感じました。


■行動活性化療法入門

行動活性化療法とは、認知行動療法の一種であり、クライエントの自発的な行動の頻度とレパートリーを増大させ、それらの行動が生活の中で強化を受ける経験を増やすことを目的とする心理療法です。行動活性化療法はうつ病に対する有効性が確認されていますが、そのほかにも不安の改善や、PTSDに対する有効性なども確認されており、うつ病以外の問題にも適用される診断横断的アプローチと言われています。うつ病の人の特徴は特定の活動の喪失と回避行動の増加にあると考えると、行動活性化療法では回避行動(抑うつ的な行動)に変わる健康的な活動(抑うつ改善につながる行動)を増やすことで、長期的にみて"より良く生きること(well-being)"を目指します。

行動活性化療法はアセスメントと十分な心理教育を行った上で介入を実施していきます。介入では、健康的な活動を増やす単純活性化と回避行動を減らす回避行動への介入の大きく分けて2つを行います。単純活性化では、その人が健康な時に行っていた全ての活動が対象となります。行動が正の強化で維持されることを想定しながら、スモールステップでの目標決めを行い、活動を記録してもらいます。次に回避行動への介入は、機能的アセスメントを用いて回避行動を同定していきます。それができたら、代わりとなる対処を考え、実際にその対処を試し、振り返りを行います。そこで良い結果が得られたものについては、今後の生活に取り入れていきます。このようにして行動活性化療法は実施されますが、特に印象的だったのは、回避行動の扱い方です。「回避」という言葉はネガティブなイメージを相手に与える可能性があるため、回避=逃げというイメージにならないように工夫をすることが大切です。支援者が説明を行う中で、クライエントに受け入れられやすい言葉を使ったり、そのような行動をするのは当然であるとノーマライズすることでネガティブな印象を与えすぎないように工夫します。

行動活性化療法はクライエントが身につけるセラピーです。そのため、支援者としてクライエントの実生活と結びついた内容となるように、アセスメントから介入までしっかりと実施していきたいと思います。


いずれのワークショップも臨床での活動の上で大変有意義な学びとなりました。今回の学びを活かして、より患者さんの改善に役立てるように精進していきたいと思います。

臨床心理士 岡田 睦未

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